活動の軌跡

開催報告

【開催報告】「キュイジーヌ・サンテ」~身体に優しい健康的なフランス料理~

全日本司厨士協会 関東総合地方本部 神奈川県本部 & 横浜ガストロノミ協議会  (2024.1.24開催)
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健康の源は食にあり。約50年前・ミッシェル・ゲラール氏が提案したとされる「キュイジーヌ・サンテ」。
健康志向、高齢化のニーズにトップシェフはどのようなアプローチで健康を維持するための食事を考え、実際に職場で取り組んでいるのか。
事例を織り交ぜながら「身体に優しい健康的なフランス料理」をテーマに調理実演いただきました。
講師は全日本司厨士協会 関東総合地方本部 神奈川県本部と横浜ガストロノミ協議会のトップシェフ、土戸将治シェフ(横浜ロイヤルパークホテル)と難波秀行シェフ(レストラン ペタル ドゥ サクラ)のお二人。それぞれが考え抜いたフランス料理を一品ずつご提案いただきました。同時にご紹介いただいたペアリングドリンクにも注目です。
2つの業界団体がタッグを組み一つのテーマにセミナーを開催する、初の試みです。試食&試飲、質疑応答などを通し、参加者や両団体のシェフたちの交流を深めるセミナーとなりました。惜しみなく技や知識を披露して下さったシェフの皆さま、ありがとうございました。

実演料理

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土戸 将治 氏
横浜ロイヤルパークホテル  フレンチレストラン「ル シエール」シェフ
(全日本司厨士協会 関東総合地方本部 神奈川県本部)
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IMG_7530.JPGIMG_7525.jpg<前菜>
ズワイガニのエフィロッシェと昆布ジュレのディスク
"鈴也ファーム"カリフラワーのデクリネゾン
Effilocher de Crabe Zuwai et Gelee de Conbu avec declinaison de chou-fleur

現在、漁獲量が減ってきているズワイガニと様々な調理を施されたカリフラワー等の野菜との組み合わせです。健康的に育てられた情熱的生産者鈴也(すずなり)ファームの野菜を余すことなく、ピューレにしたり、揚げたり、パウダー状にしたりとすべて使い切る土戸シェフのテクニックに真摯な料理姿勢が垣間見れた一皿でした。昆布やハマグリのエキスなど和の素材も使っています。真面目で礼儀正しく、知的でありながらユーモアのセンスもあるお人柄がお話や調理作業に現れていました。美しい盛り付けは、通勤途中の風景や公園の散歩など自然からインスピレーションを得られているとのこと。シェフの「フランス料理」は見ても食べても軽やかで美しく美味しいオードブルでした。


IMG_7414.JPG<ペアリングドリンク>
NON/NO.1 ソルティッド・ラズベリー&カモミール(ノンアルコール炭酸飲料)

ペアリングはオーストラリア産の発砲性ノンアルコールドリンクです。デンマークのレストランnomaの元シェフが監修したことでも注目のドリンク。ロゼのスパークリングを思わせるようなフランボワーズの色合いは美しく、ドライですっきりした酸味とカモミールが深みを与え前菜にとても合う、お酒でなくても食事を楽しめるドリンクです。
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SDGsの取り組みの一つ。さまざまな食材をパウダーにして有効活用。盛り付けの仕上や、皿のストーリーの仕上に
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採れたて鈴也ファームの野菜。生産者と食べ手の間を短くしたいと土戸シェフ
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土戸シェフが使用しているエラスティックやエスプーマ用のパウダーも紹介いただきました
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難波 秀行氏
レストラン「ペタル ドゥ サクラ」オーナーシェフ
(横浜ガストロノミ協議会)
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IMG_7574.JPGIMG_7614.JPG<メイン・魚>
横浜中央卸売市場から届く鮮魚のレクタングル 西谷の苅部人参
Le Rectangle de poisson aux carottes Karubé

「薬膳フレンチ」を日々ご自身のお店で実践している難波シェフには身体に優しい料理としてメインの魚料理を教えて頂きました。パリやブルターニュで研鑽を積まれたシェフは、師事したフランス人シェフへの敬意も込めて、このお料理をお店のスペシャリテとしているそうです。様々な色をした横浜野菜 西谷の刈部(かるべ)人参をやはり余すことなく、ソースやガルニチュール(付け合わせ)に仕立ていきます。今回の鮮魚は北海道の平目。「薬膳フレンチ」のテクニックのひとつであるスパイスや酒で絶妙に下味をつけてから型に詰め、真空にかけて低温で火を入れました。仕上げに調理の過程で出た人参の搾りかすを中心としたクルートを平目に乗せてさっと温めるというアイデアも教わりました。「こんな魚料理は食べたことが無い」と試食したシェフから驚きのコメントが出る程で、杏仁と魚の組合せなどとても新鮮でした。
the.jpg<ペアリングドリンク>
豆ヨガ茶(国産食材を使用したノンカフェインのお茶)

ペアリングは豆ヨガ茶。難波シェフと長年「薬膳フレンチ」に取り組まれている「薬膳ヨガ®」の講師によるブレンドティー。シェフが生のニッキの葉を農家から収穫し、葉をちぎってお茶と一緒に煮出しました。フレッシュなニッキの香りと黒豆、ほうじ茶、クコの葉、どくだみ、ビワの葉など10種類の素材の味と香りが楽しめ、飲んだ瞬間に身体に染みわたるようなお茶でした。
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難波シェフが師事したシェフの著書とニンジンのレシピのぺージ
IMG_7553.JPGIMG_7568.JPG難波シェフも生姜の皮やニンジンなど乾燥させ、余すことなく活用されていました
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人参ソースは季節によって味や甘みが変わるので日々レシピを調節
IMG_7538.JPGIMG_7536.JPGcarotteIMG_7420.jpg
さまざまな色をした横浜野菜 刈部人参
423944197_1555986045234507_529931728986425601_n.jpgフレッシュなニッキの葉


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シェフへの質問
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セミナー中や、質疑応答の時間に挙がった質問へ、両団体のシェフにお答えいただきました。

◎健康を考えてメニューなどで工夫されていることはありますか?
・油脂、塩分、カロリーを減らすことを考えます。(ただ減らすだけではなく)どうやったらお客さまの印象に残る料理に出来るかも考えています。フランス料理に「和」の旨味を取り入れ、昆布だしを使用したりもその一つです。
・通常つなぎに生クリームやバター、ゼラチンを使うのですが、エスプーマ用のパウダーを使うとカロリーも減らせ、泡もちが良く、ゼラチンが食べられないお客さまにも使えるなどメリットも。
・新鮮な食材を使うこと、ハーブなどの香りを足してあげることで、塩分や砂糖を減らすことが出来ます。
・食が細い方、高齢の方でもフランス料理を楽しんでいただけるよう、品数を減らしたコースを用意しています。

◎SDGsの取り組みは何かされていますか?
・ホテルでは宴会や婚礼も多く、食材のロスをどれだけ減らせるかが課題。例えば、ニンジンやトマト、カリフラワーや昆布・・・など、乾燥させてパウダーにしたものは盛り付けの仕上げに使用しています。何でもパウダーに向いている訳ではないので日々試しています。

◎どうやって食材の情報を得ていますか?
・シェフ同志の集まりで情報収集したり、お客さまからここの野菜が美味しいよと生産者さんを紹介してもらい、訪問して実際に使い始めたものも。
・中央市場の仲買さんから教えてもらうことも。

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参加されたお客さまの声
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◎革新的な調理法や食材の組合せが非常に勉強になりました。
◎身体に健康的なフランス料理は日頃から取り組んでいる分野であり、改めて重要性を認識することが出来ました。
◎ワインを煮詰めたものを常備しておくこと、エラスティック、杏仁の使い方などとても勉強になりました。
◎野菜の味や食感などの特製を生かしたり、食材の組合せ方が勉強になりました。
◎二人の講師の方の料理の考え方や技法、経験したことなど料理人として吸収することが沢山あり勉強になった。

これらを始め、沢山のご感想をいただきました。

【主催】厨BO!YOKOHAMA 
【特別協力】一般財団法人 全日本司厨士協会 関東総合地方本部 神奈川県本部
      NPO法人 横浜ガストロノミ協議会
【協賛】一般財団法人 ザ・ブラフクリニック

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講師紹介
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土戸 将治(つちど まさはる)氏
横浜ロイヤルパークホテル フレンチレストラン 「ル シエール」 シェフ


1980年 東京生まれ
2003年 大学卒業後、武蔵野調理師専門学校 入学
2004年 横浜ロイヤルパークホテル入社 宴会コールセクション配属
2005年 フレンチレストラン 「ルシエール」配属
2009年 渡仏 
●ミシュラン1つ星レストラン「Au 14 FEVRIER(オ・キャトルズ・フェブリエ)」ロワール地方 
●ミシュラン2つ星レストラン「Le Chabichou (ル・シャビシュ--)」サヴォア地方 
●ミシュラン2つ星レストラン「Mandarin Oriental Hotel Paris,Sur Mesure par Thierry Marx
(マンダリン オリエンタル パリ、シュール ムジュール パール ティエリー マルクス)」パリ にて勤務。
2010年 帰国後 フレンチレストラン「ル シエール」配属
2018年 スカイラウンジ「シリウス」アシスタントシェフ就任
2021年 フレンチレストラン「ルシエール」 シェフに就任

【料理コンセプト】
伝統とモダンの融合"NEW CLASSIC"
クラシックなフレンチの要素をベースに、現代的な感覚を加えた料理を目指し、「美しさ」「表現力」「驚き」「創造性」「五感」
ストーリー性を意識したメニュー構成を取り入れた料理。
nambaIMG_7442.jpg難波 秀行(なんば ひでゆき)氏
レストラン 「ペタル ドゥ サクラ」 オーナーシェフ 

1974年 岡山県津山市生まれ
18歳から広島、東京のレストランで修業
2001年 渡仏
一時帰国し「ラ・ロシェル南青山」の石井シェフに師事し、再び渡仏。
●ミシュラン2つ星レストラン「L'hôtel de Carantec restaurant Patrick Jeffroy」ブルターニュ地方
●ミシュラン2つ星レストラン「e.t.c.」パリ
●ミシュラン3つ星レストラン「Le Pavillon LEDOYEN」パリ で部門シェフ等を務める
2009年帰国 三國清三シェフに出会い「ミクニヨコハマ」の支配人兼料理長を4年間務める。
2014年12月 オーナーシェフとして「ペタル ドゥ サクラ」を開業

【他活動】
講演・料理教室等で食育の活動も行う
「濱の料理人」の副会長、「NPO法人 横浜ガストロノミ協議会」の理事、
「クラブアトラス」、「トック・ブランシュ国際倶楽部」のメンバー

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