レシピの話

フランス地方料理を巡る旅

お菓子 グラン・テスト地方

ビスキュイ ローズ ド ランス 

Biscuits roses de Reims

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ビスキュイ・ローズ・ド・ランス(Biscuits de Reims)をご紹介します。
シャンパーニュはフランスの北東部のシャンパーニュ地方で作られるスパークリングワインの最高峰。シャンパーニュの発祥は、1680年頃に修道士のドン・ペリニョンが瓶内に泡を閉じ込める製法を確立したことから始まります。ランス(Reims)はシャンパーニュ地方の中心地。ここに伝わる地方菓子のご紹介です。生地にもシャンパーニュを使用していて、相性もぴったり。詳しくは最後のシェフエピソードにてゆっくりお話ししましょう。ランスへはパリから約140㎞、車で約1時間半、電車で1時間弱。日帰りで訪れることもできます。

材料

<材料>(8cm×約50本)
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  • 卵黄: 60g
  • グラニュー糖: 100g
  • バニラ(ビーンズ): 1本
  • シャンパーニュ: 10ml
  • 色粉〈赤〉: 適量
  • 薄力粉:125g
  • 卵白:120g
  • グラニュー糖:60g
  • 粉糖:適量

作り方

  • ボールに卵黄とグラニュー糖を入れ、白っぽくなるまで、泡立てる。ふるった薄力粉を加え、混ぜる。
  • バニラ、シャンパーニュ、色粉(水溶き)を加え混ぜる。
  • 別ボールに卵白を入れ、泡立てる。グラニュー糖を4、5回い分けて加え、しっかりとしたメレンゲにする。
  • 23を2、3回に分け、さっくり混ぜ合わせ、生地をつくる。
  • 生地を絞り袋に入れ、クッキングシート上にフィンガー状に絞る。
  • 絞った生地の上に粉糖を振り、焼成する。
      →スチコンの場合ホットモード・100%・175℃・8〜9分・風量2
      →ガスオーブンの場合 180℃で8〜9分。
  • 焼き上がったら、冷まし、粉糖を振る。
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シェフエピソード

 ランスのお土産としては、まず「シャンパーニュ」ですが、お菓子となると「ビスキュイ・ローズ・ド・ランス」がやはり№1です。ビスキュイ・ローズとは、フランス シャンパーニュ地方に代々伝わる焼き菓子で、ピンク色をしたビスケットです。その歴史は古く、1690年頃から存在しているようです。なぜピンクなのかと言うと原料にバニラを使用しているので、白い生地だと焼き上がりに黒い点々が目立ってしまいます。それを隠すために色素を使って可愛いピンク色に仕上げたのが始まりだとか。18世紀にはルイ16世にも献上され、フランス王室御用達のビスケットとして宮廷で愛されていました。今日、ランスでシャンパーニュのデギュスタシオン(試飲)をすると、必ずと言っていいほど、このビスキュイ・ローズが一緒に出てきます。形も長方形、フィンガーと様々ですが、もともとシャンパーニュに浸して優雅に食べる小菓子なので、グラス口径よりも小さくて、指でつまめる形状が基本のようです。今回は、作りやすいフィンガー状に焼いてみました。

 ここでレストランの調理場のお話を少し。お菓子作りは、基本的に「パティシエ(菓子職人)」の仕事です。我々が働くレストランにも「パティシエ」がいますが、フランスでは、キュイジニエ(料理人)とパティシエは、別の職業です。なので、ある程度の規模、格式のあるお店では、キュイジニエがお菓子やデザートを作ることは、まずありません。(が、あるお店で私はシェフに頼み込んで1週間だけパティシエをやったことがあります。その時とんでもなく嬉しいハプニングが・・・。お話が少し長くなるので、またどこかで書きます。)

 余談ですが、キュイジニエは、洗い物(調理道具)も一切しません。プロンジェ(洗い場係)がすべて洗います。ただ掃除は徹底的にします。それも1日4~5回。完璧にピカピカにします。仕込み中でもサービス中でも、どんどんお客様が調理場を見学に来るので、常に綺麗にしておかなくてはいけないのです。早い時は、朝食(働いたお店がすべて地方のオーベルジュなので)を食べた後に来たりします。入れるのは、普通、パス(料理を出す所)の手前までです。例外的にミシュランの調査員だけは、調理場の中に入ってきて、隅々まで見ます。シャンブル・フロア(ウォークイン冷蔵庫)の中まで見ます。もちろんシェフがしっかりアテンドしてですが・・・。ちなみに、ミシュランの星のことを「Étoile・エトワール(星)」と言いますが、我々、キュイジニエの間では、「Macaron・マカロン」とも言います。ガイドブックに表示されるマークの見た目としては、こっちかもです。

 余談が長すぎました。さて、「ランス」でのエピソードの続編です。※「ランス」でのエピソード前編は『レシピの話』の「牡蠣のシャンパーニュ風」をご覧下さい。

 パリ東駅からスーツ姿の日本人二人がTGVに乗り込みます。傍からすると「日本人ビジネスマン」にしか見えない恰好です。まさかヨーロッパで料理修行中のコックさんとは、誰も分からないでしょう。

 余裕をもってパリを出たので、片手にミシュランを持ち、地図を見ながら、ランス駅から徒歩で「ボワイエ(Boyer les Crayèrs)」※1 に向かいます。途中、あの有名な「ノートルダム大聖堂」や「テタンジェ社」の前を散策しながら、レストランに到着。昨日は、パリの小規模でエレガントなレストランだったので、まずその大きさに圧倒されます。「ええ~。お城じゃん・・・!」だんだん緊張してきました。日本にいる時、「専門料理」に掲載された写真は見ていたものの、本物を目の前にすると、やはり迫力が。

 レセプションで予約の名を告げるとマダム・ボワイエが登場して、席まで案内してくれます。「スッゲー!超綺麗です。」歩きながら、キュイジニエだとすぐ察したらしく、どこで働いているのか聞かれます。数日前まで働いていた店名を答えると、そこのマダムとマダム・ボワイエが友人らしく満面の笑顔で席に着いてからも、いろいろお話しをしてくださいました。そうこうしているうちに今度は、シェフのムッシュ・ボワイエがメニューをもって現れました。周りには黒服数人はひかえています。注文していないシャンパーニュが運ばれてきました。完全にソワニエ(大切なお客様)扱いみたいです。より緊張です。

 白髪交じりの栗色の髪をオールバックに眼鏡、そして笑顔。コックコートを着ていなかったら、俳優にしか見えません。「おー!カッキー。」シェフを見て、そう思ったのは、フランスでは彼が最初でした。二人目は、サンテティエンヌで三ツ星を取っていたムッシュ・ピエール・ガニュールです。「んーん。やっぱり黒髪より栗色なのかな?」そういえば、パリで働いていた別の後輩は当時、金髪寄りの栗色髪にしていましたっけ。その時、なぜか腑に落ちたような・・・。

 メニューをチョイスしていると、アミューズ(前菜の前に出るアペリティフ用の少量の料理)が運ばれてきました。乾杯。料理が決まり、いよいよ食事のスタートです。しかし、しかしです。前日、昼、夜と星付きレストランで残すことなく、食べてしまったせいか、アミューズからなかなか箸?(ナイフ、フォーク)が進みません。目の前には、すばらしいお料理があるのに・・・、ボワイエご夫妻が見ている。二人で顔を見合わせ、頷き合い、意を決して食べます。

「おー!抜群に美味しいのに・・・。う・・・キツイ。」

いつだったか辻静雄先生の本で読んだ「職員のフランス食べ歩き」の一節が頭をよぎります。(古い本ですが、読んだ方は分かると思います。)「これかあ~!俺たちは、まだ3軒目なのに・・・。」辻調の先生は偉大です!前日と同じ3時間をかけて、やっと食事を終えました。残しませんでした。笑顔のボワイエご夫妻に見送られてランス駅に向かいました。二人無言。(シェフ M.T)

※1 ボワイエ・レ・クレイエール(Boyer les Crayères)
1875 年に大手シャンパンメゾン「Pommery」のオーナー、マダム・ポメリーが愛娘のルイーズの婚礼のためにこの敷地を購入し、建設したシャトー。広大な敷地を有し、ランスのランドマークであり、伝説的ホテルと知られるシャトー " レ クレイエール "「Domaine Les Crayères」のこと。長い間「Boyer Les Crayères」と呼ばれて来たシャトーは、代々ボワイエ家が受け継ぎ、長年ミシュラン3ツ星を維持し、地元では「ボワイエ」の名前で親しまれていた。現在はポメリー家の直系ギャルディニエ家"Gardinier Family" がオーナーを務める。一時期星を失っていたが、現在M.O.F.(フランス最優秀職人章)のPhillip MILLE氏がシェフを務め、二つ星に輝いている。
レ・クレイエール → https://lescrayeres.com/ 64, Boulevard Henry Vasnier -51100 Reims - France

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