レシピの話

フランス地方料理を巡る旅

オクシタニー地方

【特別編】カスレ (2) 「パッションにとってのカスレとは」パトリック・パッションさん

Cassoulet part2 ~collaborateur M.Patric PACHON~

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▲アンドレ・パッション氏によるカスレ

前回、オクシタニー地方の伝統料理「カスレ」をご紹介しました。今回はその続編です。
日本で初めてカスレを紹介し広めたアンドレ・パッションシェフについてご紹介したいと思います。
カスレといったらこの方という程、代名詞的存在のパッションさん。1970年に来日され、それ以来ずっと日本で本物のフランス料理を伝えることに情熱を注いでこられました。1984年~はご自身のお店「レストラン・パッション」(代官山)をオープンされ、現在はパトリックさん、ティエリーさんという二人の息子さんもサービスや経営に加わり、パッショングループにてご活躍されています。


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▲パッション氏が育ったカルカソンヌの要塞都市は世界遺産に登録されている。シテの外観は遠くからでもそびえ立つ様子が見える


その中でもカスレは特別。カスレやその歴史、文化の普及、継承ためにカスレの会を立ち上げるなどその活動は世界規模に展開されています。レストラン・パッションではカスレ・ディナーなるお祭り気分を味わいながらカスレを楽しむ会もあるくらい。なぜそんなにカスレに情熱を?と思われるかもしれません。アンドレ・パッション氏はオクシタニー地方のモンペリエで生まれ、カルカソンヌで育ち、カスレの王様と呼ばれていたマルセル・エムリック氏のもとで修業をスタートされた方。生まれ育った土地の郷土料理なのですから思いは格別でしょう。


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▲こちらも世界遺産のミディ運河。両側を並木に挟まれたとても美しい運河。観光船でゆっくり楽しむコースもあるが、17世紀に建設され、19世紀に鉄道にとって代わられるまで、大西洋と地中海を結ぶ重要な大量輸送ルートとしての役割を果たしていた

さて、前置きが長くなりましたが、現在「レストラン・パッション」でサービスを担当し、メートル・ド・セルヴィスの会や、サービスコンクールの審査員などで活躍されているパトリック・パッションさんから「パッションにとってのカスレ」と「アンドレ・パッションの恩師 マルセル・エムリックのカスレ」「カスレに合うワイン」についてのエッセイを寄せていただきました。フランス人にとってのカスレとは? パッションさんにとってのカスレとは?
どうぞお楽しみください。


【特別寄稿】
『パッションにとってのカスレとは』
パトリック・パッションさん

 アンドレ・パッションのルーツであり、アンドレが一番最初に覚えた料理の一つ。彼の出身地を代表する郷土料理を、まさか日本でこれほどまで広めることが出来るとは、50年前に来日した当時のアンドレには想像もできなかったことでしょう。アンドレは、"フランス料理"以上に、地方料理(テロワール)、特に地元の南フランスオクシタニー地方の郷土料理を大切にしてきました。時代の流れに影響されず、クラシックなフランス料理を作り続ける、それがアンドレのカスレに対する想いです。時代がかわってもアンドレのカスレはぶれずに変わらない。それをアンドレは誇りに思い、そして、それこそが、お客様が一番たのしみにしていることです。それら全てが"カスレ"なのです。

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『アンドレ・パッションの恩師 マルセル・エムリックのカスレ』

カスレはオクシタニー地方の料理の神と呼ばれ、キリスト教の教義である三位一体に置き換えて、『父なる神はカステルダノリー』、『神の子はカルカッソンヌ』、『聖霊はトゥールーズ』であると表現されています。
これはプロスペール・モンタニェが唱え始めたことで、三つのカスレのどれもが本質で、優劣はなく、平等で価値があることを意味しています。
他の郷土料理と違わず、カスレもオクシタニーのお母さんが作る家庭料理です。家族が集まる日曜日にふるまう料理。
カスレに火を通すのは時間がかかるので、あらかじめカソールに仕込んでおき、日曜になるとカスレをパン屋に持って行って、竈(かまど)で焼いてもらっていました。パンは朝のうちに焼くので、そのあとは空くのです。竈の火は落としてしまいますが、余熱で充分。美味しそうな焼き色が付きます。
三つのカスレの話に戻りますが、具材はそれぞれ異なります。
アンドレ・パッションのカスレは恩師であるマルセル・エムリック氏のルセットを踏襲したもの。
彼はカステルダノリーの生まれでしたが、カルカソンヌに店を開いていたので、三つの都市のどれとも少し異なり、独自のルセットで作り、またそれが人気を博していました。
使っている白いんげん豆も料理人によって違い、アンドレはタルブ種を愛用しています。もっちりとした食感で、煮込んでも皮が破れずきれいな形を保ったまま仕上がるのが魅力です。

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▲ライトアップされた姿も壮観

『ワインとのマリアージュ』

お薦めワインの1つとしてご紹介致します。 『シャトー・ラ・トゥール・ボワゼ"マリ・クロード"ルージュ ミネルヴォア』
産地:ラングドック
品種:シラー、グルナッシュ、カリニャン/赤
熟成感たっぷりの赤いベリーの風味、スパイシーさはいい意味でラングドック臭さがあり、南仏の香り、テロワールを求める人たちにうってつけ。煮込み料理との相性は秀逸。
オーナーのプドゥー氏がアンドレ・パッションの大親友である縁も格別。カルカソンヌの"マルセル・エムリックのカスレ"のための選択で、地元の祭りなどではこのタイプのワインが出てきます。
( Patric PACHON )


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▲左からパトリックさん、アンドレシェフ、ティエリーさん

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