レシピの話

フランス地方料理を巡る旅

オー=ド=フランス地方

フィセル・ピカルド ~ ピカルディ風クレープグラタン ~ (2)『ワインの話』

Le vin avec Ficelle picarde

フィセル・ピカルド(1)の続きです。オード・フランス地方のこの料理に合わせるにはどんなワインが良いか、今月もメートルドセルヴィスの会の岩佐さんにご寄稿いただきました。意外?!にも感じるセレクトですが、読めば納得。いろいろな世界と熱々のフィセル・ピカルドが頭に広がり、一緒に味わってみたくなりました。値段もお手頃な価格帯なのが嬉しいですね。それでは続きをどうぞ。

~ 第2章 ~ 
フィセル・ピカルドのワインの話
岩佐 和(いわさ わたる)さん(学士会館精養軒)


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 さて、今回は北フランス"オー・ド・フランス"の郷土料理です。この地には王族貴族たちによって築かれた、風光明媚なシャンティイやピエルフォン、コンピエーニュなどのお城や、アミアン、ボーヴェの大聖堂など、歴史的な建造物も残っています。

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▲コンピエーニュ城はパリから25㎞。14000ヘクタールの森を擁する。ヴェルサイユ、フォンテーヌブローと並びフランス王家の最も重要な居城と言われている。

 アグリカルチャー(農業)では何より乳製品の産地。豊かな放牧風景がまずは思い浮かぶ景色の一つではないでしょうか。郷土料理のベースである地産地消。その通りこの"フィセル・ピカルド"でもクリーム・バターがしっかり使われています。玉葱・マッシュルームとハムですから動物性の旨味に乳脂が絡んでチーズを振って焼けばそれはもう旨いですよね。黄金のコンビネゾン!私がジュネーブのオールドタウンにあったレストランに勤めていた時、この郷土料理に非常によく似た"アンディーヴ・オ・ジャンボン・グラチネ"と言う名の逸品がありました。ぐつぐつ熱々のココットにチーズで焦げ目がついたそれを可能な限り早くゲストのもとへ届ける!それは楽しい時間でした。あぁまたあの雰囲気に包まれたい...。IMG_0816.JPG  本題に戻りピカルディーについて。実はワインの生産が非常に少ないフランスでも珍しい土地です。私も詳しく存じ上げませんが、もしかすると地ビールの生産が多かったりするのかもしれません。だからと言って、ワイン以外のものだけでこの郷土が繁栄してきた訳ではないでしょう。ロワールも近い、アルザスも地理的にはほぼ隣りです。
 シンプルに内陸の食文化であり、粉料理のクレープに肉と乳脂でクリーミーになり山のチーズ独特の長い熟成から生まれる旨味がグラチネされている。こうなると、もう山の白ワインを想像します。291420526_790416495643842_3739224044398230868_n.jpg292063965_356178690014075_7718949529846574230_n.jpg

▲ジュラ地方

ジュラ地方のサヴァニャン=ナチュレ(フランスでのシノニム)を使って作られるワインなんてどうでしょうか。ほんのり酸化熟成のニュアンスがあるものが欲しくなりました。私にとってのポイントは前述ルセット仕上げ部分にあるグリュイエールチーズ。この料理の決め手であるそこに、素晴らしく寄り添ってくれるのでは?と思いました。

比較的雨が多いと言われるジュラ。そのワインからも、どこかしっとりしたニュアンスがあり、アロマの中に木々や森も感じられると思います。木々や森ですからナッツ(木の実)も、そんな環境には蜂も共存していそうですね。その通り蜂蜜や、そこからスパイスへと自然との繋がりを見せてくれます。

たくさんのショワ(選択)の中から、今回はこの1本です。

Domaine philippe VANDELLE
ドメーヌ・フィリップ・ヴァンデル
L'ETOILE Savagnin
レトワール サヴァニャン

ジュラで最も規模が小さなAOCレトワール。
サヴァニャン100%でウイヤージュ(捕酒)をしない伝統的なスタイルの白ワイン。

もうひとつ赤ワイン選んでみましょう。
ボジョレの赤なんてどうでしょうか。ボジョレヌーヴォーのイメージがあるからあまり選ばないカテゴリーでは? 早飲みで軽くてフレッシュ、ではない、素朴・ピュアで果実味が溢れています。え?ガメイなの? ボジョレを、ガメイのポテンシャルを改めて知らされるワイン。

Chateau Cambon
シャトー・カンボン
Beaujolais
ボジョレー

フランス自然派ワインの父とも呼ばれ世界のヴィニュロン(ブドウ栽培兼ワイン醸造農家)達にも大きな影響を与えた"マルセル・ラピエール"。残念ながら彼が他界した後も、その奥様とマルセルの幼馴染たちが共にシャトー・カンボンで、そのエスプリを継承しながらワインを造り続けています。

野イチゴやローズを連想させる香り、甘味豊かなさくらんぼのピュレが広がりきれいで柔らかな酸味。すばらしい豊かな酒質。

私はこの赤ワイン、合うと思います。

味わいは上記を参考にご自身で感じながら、こんなお料理と楽しんでみて下さい。
今夜はプーレとグリュイエールのグラタンにします!
Alors, Bon Appetit!
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▲ボジョレー地方のぶどう畑

寄稿者:メートル・ド・セルヴィスの会 岩佐 和(いわさ わたる)
     学士会館精養軒 フランス料理 ラタン
     マネージャー ソムリエ
     メートル・ド・セルヴィスの会 幹事
     APGF 2019年 第18回メートル・ド・セルヴィス杯 準優勝

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