レシピの話

フランス地方料理を巡る旅

ブルターニュ地方

バルダット ブルターニュ風ロールキャベツ(1)『レシピの話』

Bardatte

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今月もブルターニュ地方を訪れます。日本でもお馴染みのロールキャベツ。キャベツの葉で肉などの詰め物を包み煮込んだ料理ですが、フランスではシュー・ファルシ(chou farci)と呼ばれ、各地に様々なレシピが存在します。そしてブルターニュ地方にもありました。海の幸を使うのか?そば粉か?どんなロールキャベツ?と思ったら、なんとウサギ。形もユニークです。丸いキャベツの形をしています。名前の由来や、シュー・ファルシにまつわるシェフエピソードなどは後半で。

~ 第1章 ~
 バルダット ブルターニュ風ロールキャベツのレシピの話

材料

<材料>(8人前)
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  • キャベツ:1個

(ファルス)詰め物
  • ウサギひき肉:300g
  • ソーセージ用ひき肉:300g
  • シブレット:30g
  • 卵:1個
  • 塩・コショウ

  • ベーコン :300g
  • 栗(甘栗を使用):適量
  • バター:50g
  • ブイヨン・ド・ヴォライユ(鶏のブイヨン):1000ml
  • 白ワイン:200ml
  • ラード:適量
  • タイム
  • ローリエ

作り方

  • キャベツの芯を抜き、丸ごとブランシール(塩ゆで)しはじめ、外側の葉から氷水にとる。
  • ファルス(詰め物)の材料をよく練り合わせる。しっかりアセゾネ(塩・胡椒で味を整える)する。
  • 水気を切った、キャベツの葉を広げ、ファルスをしっかり包む。(ひき肉の層が3層になるように)
  • さらし生地でベーコンの薄切りをのせた3を包み、絞りながら形を整え、キャベツの形にする。
  • フィセル(タコ糸)で縛り、煮崩れを防止する。
  • ココット鍋の底にラードとバターを敷き5を入れ、白ワイン・ブイヨンを注ぎ入れる。ブーケガルニも加える。
  • 直火でひと煮立ちしたら、蓋をしてスチコン(ホットモード・180℃・3時間・風4)で加熱する。
  • 栗を加え、蓋をして少し休ませる。
  • 一人前ずつ切り分け、皿盛し、キュイッソン(煮汁)を注ぎ、提供する。
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バルダットの説明&エピソード

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 フランスの地方には、chou farci(シュー・ファルシ/ロールキャベツ)が郷土料理として根付いている場所がいくつもあります。代表格はフランス中南部に位置するオーヴェルニュ地方のシュー・ファルシですが、今回は少し毛色の違うブルターニュのシュー・ファルシをご紹介します。ちなみに日本のロールキャベツは、子供のときから私の大好物です・・・。


 まずキャベツですがフランスでは本来、chou frisé(シュー・フリゼ/ちりめんキャベツ)という葉っぱがネット模様のものを使います。火を入れると柔らかくはなりますが、繊維がしっかりしているのでとろけてしまうことがありません。味もしっかりしています。お料理の種類・用途によって外側と内側を使い分けたりもします。
 日本では一部の高級スーパーで売られていますが、一般的にはほとんど出回っていない品種です。もちもん日本のフランス料理レストランでは仕入れますが、低価格のお店ではどうしても使いずらい値段です。我々が普段食べている「普通に美味しいキャベツ」の10倍なのです。そこで今回は手に入らなかったこともあり「普通に美味しいキャベツ」の方を使いました。
中に詰めるファルスですが、他が豚肉や牛肉で作るのに対して、「バルダット」はウサギを使います。あればソーセージ用のファルス(豚肉+スパイス)も加え、ハーブ類で香りも加えます。そして付け合わせに栗を組み合わせるのも伝統的なレシピです。
 この料理名のBardatte(バルダット)は、調理用語の「Barder(バルデ)」からきているそうです。その意味は肉やファルスをローストやテリーヌにする時に表面の乾燥を防ぐため豚背脂の薄切りや薄切りベーコン等で巻いたり包んだりする作業。ということは、その工程を踏んでいないと「バルダット」ではなく「シュー・ファルシ」となります。
 次に形状ですが、大きなまんまるで元のキャベツの形を模しています。1人前ずつに切り分けて食べるスタイルなので、大人数に適した料理です。その昔、農夫さんたちが畑仕事の休憩時間に仲間たちと一緒に食べていたそうで、仕込みも大きいのを1個作ればいいし、ココットに入れて調理してそのまま畑へ持って行けるので、このやり方が根付いたのでしょう。そこから郷土料理として認知されていきました。大地の恵み的な美味しさです。ビストロ料理としても人気の一皿です。
IMG_1509.JPG いわゆるミシュランの星付きレストランではそのままの「シュー・ファルシ」として登場することはまずなくて、形や大きさ、ファルスの内容を工夫してメイン料理のガルニチュール(付け合わせ)として可愛らしく仕上げて添えたりします。
 ただ私が働いていたレストランの中で1軒だけこの形状の「シュー・ファルシ」がメニューに載っていました。料理名は「Le Chou farci aux Gibiers de Sologne , braisé à l'Ancienne 」(ソローニュのジビエのシュー・ファルシ 昔風蒸し煮)。
 Gibier(ジビエ/野生の鳥獣)で名高いレストランだったのでファルスもちろんジビエ肉です。それをシュー・フリゼ(ちりめんキャベツ)で何重にも包み大きくしていくのですが、表面には豚背脂やベーコンは巻いていませんでした。ただこの料理の仕込みが謎で、私がいた肉担当の部署では行わず、いつも昼と夜の間の休憩時間に当時のシェフ(この3年後にMOF(※1)を獲得)とスゴン(副料理長)の二人がライトが消えた暗い(外光だけ)調理場で仕込んでいました。たまたま休憩中に忘れ物を調理場に取りにいったときに初めてその光景を見てしまい、ずっと不思議に思っていました。「何で俺たちにやらせないんだろう?」「もしかして門外不出、秘密のルセットなのかな?」モヤモヤ~~~。
  冬のフェルメ(冬季閉店)が近くなり、次の修業先に移るため(次店のシェフに入店する日を指定されたので)、私だけ他の仲間より一足先に退店することになりました。他の彼らは本来三ツ星しか回らないエリートたちなのですが、ジビエを学ぶために1年間ここのレストランに来ているので、シーズンの最後まで、あと1週間勤めてからバカンスです。
  旅立ちの朝、荷物をまとめて調理場に挨拶に行くとお店のスタッフ全員からハグ、ビズ(※2)、握手の嵐。おまけにキュイジニエ(料理人)の同僚たちからは当時出版されたばかりのミシェル・ブラスの料理本とメニュー裏に書かれた寄せ書きを、シェフからは彼の師匠であるジョエル・ロブションの料理本を、オーナーとサービススタッフからは高級なジアンのスーピエール(※3)(日本に帰ってから値段を調べて数年越しにまたびっくり!)をそれぞれからプレゼントされました。感激で泣きながら調理場で荷物の詰め直しをしてからオーナー運転のベンツでSNCF(フランスの国鉄)の駅へ向かいました。27才の寒い寒い冬、暖かーい良い思い出です。
  そうそう皆とお別れの際にシェフに「シュー・ファルシ」の件を聞いてみたんです。シェフの答えは「毎日、昼夜満席で仕込みが多く、皆、疲れていたし、それに『シュー・ファルシ』はシンプルな仕事だから。休憩中は皆すぐ寝たいでしょ!」と・・・。
「秘密のルセット」ではありませんでした。
snow-g572cfc226_1920.jpg  もうひとつ、帰国してシェフをまかされたあるレストランでは、通常営業の料理の他にデパート内のカフェに送るTraiteurトレトゥール/惣菜)料理を数種類作っていました。その中でもダントツ売り上げ1位が「特製ロールキャベツ」。作り方は極々ノーマルで、玉葱をたっぷり加えた牛豚合挽ミンチをキャベツで包み少し大きめの俵に形を整えてから、大きな鍋に隙間なくびっしり並べ、じっくりオーブンで火を入れていきます。焼き色を付けずにキャベツをトロトロの状態に煮あげるのがポイント。そして煮汁をベースに作った程良い酸味とほんのりとスパイスの効いたトマトソースをたっぷりかけて出来上がりです。いまだに私的にはこの日本式「シュー・ファルシ」のロールキャベツが一番美味しく感じます。日本を代表するフランス風洋食の逸品です。(シェフM.T)

※1・・・MOF(Meilleurs Ouvriers de France)フランス国家最優秀職人章(フランス文化の最も優れた継承者に贈られる賞。試験によって選抜される)

※2・・・ビズ(bise)頬にする軽いキス。男女関係なく交わす挨拶的なもの

※3・・・スーピエール(soupière)スープを入れる大きな器。蓋、左右に取っ手が付き、卓上に置かれることが多い。

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