レシピの話

フランス地方料理を巡る旅

コルス地方

アジミヌ コルシカ風ブイヤベース(2)『ワインの話』

Le vin avec Aziminu

 前回ご紹介したコルシカ地方のブイヤベース「アジミヌ」。魚介類に慣れ親しんでいる日本人にとって「ブイヤベース」は人気メニューの一つ。元は漁師が残った魚を適当に鍋で煮込んで作っていた「まかない料理」なのだとフランス人シェフから教わりました。なのに、今は現地で食べると観光客相手だからか結構なお値段がします。でも本当に美味しい。コルス(コルシカ)では名前がすっかり変わってしまうので、この「アジミヌ」という名前をぜひ覚えておいていただき、行くチャンスに恵まれた折には、ぜひ味わってみてください。
 今回もこの「アジミヌ」に合うお酒について、メートル・ド・セルヴィスの会の岩佐さんにご寄稿いただきました。意外な組み合わせに今回も驚きです。

~ 第2章 ~ 
アジミヌのワインの話
岩佐 和(いわさ わたる)さん(学士会館精養軒)


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▲アジミヌ

さて " Aziminu " 現地でどの様に発音されているんでしょう...
現地の言葉で聞いてみたいですね。
磯の香り、波の音と共にガツガツ食べたいお料理。

いわゆるブイヤベース! フランス料理に携わることを生業にしている日本の人々にとっては、食した経験が無くとも、その圧倒的なインパクトが画像として、また、ゲストにサーブしたことがある方はその色合いと共に香りが記憶に刻まれているのではないでしょうか。 ぐつぐつ・熱々で世界を代表するスープ料理なんだけれども明らかに " 食べる " 、そしてルイユ(※1)で味変。無論ご飯でなくパンを一緒に頬ばる漁師料理です。福岡は糸島半島海沿いの漁港脇に並ぶ牡蠣小屋で仲間や家族とワイワイガヤガヤ!こんな文化と似ているような気がします。corsican-g2f1e84b72_1920.jpg

▲コルス

この郷土料理は前回のレシピにもあるようにオレンジの皮、ロゼワインが入ります。この二つ材料でマルセイユのものとは少し違う仕上がりになっています。ホクホクしたじゃがいも、濃厚なスープで煮込まれたブリンブリンの魚の身(想像です)。なにを一緒に楽しみましょう?現地ではやっぱりロゼでしょうか。地産地消の相乗効果は本当に安心。
「ティエル・セトワーズ(Tielles a la setoises)」でもご紹介してしまいましたが、今回はコルスのロゼは外せません。このレシピのAziminuを食べながら楽しんでみたいですから。

クロ・フォルネリ ロゼ AOCコルス/クロ・フォルネリ
Clos Fornelli  Rosé AOC Corse/Clos Fornelli
2000年代前半までパリでキャリアウーマンとして活躍し、そこからパートナーと共に家業のワイナリー継承を決意。ワインMBA課程を専攻してワインを作り二人で営んでいます。
ロゼワインの二つの製法(セニエ法(※2)と圧搾法(※3))で1品種から2種類のワインを作りその違いを楽しませる等、独自の取り組みも行っているそうです。圧搾法で作られるバージョンは、スミレや野苺の香りに、口中ではシルキーに馴染みつつザクロにほんのりスパイスを加えたジャムのよう、濃いオレンジの柔らかでいて軽快な酸味がアジミヌの後味をふんわり包み込んでくれそうです。あの地中海の色、料理色とも映える!

そしてもうひとつ。
牡蠣小屋をイメージしてから日本酒が頭から離れません。
寒くなってきたし、この濃厚なお料理には " ぬる燗 " !
四国は島根の地酒を是非。

玉櫻玉櫻酒造有限会社
玉櫻 純米 五百万石
この蔵のレギュラー純米酒です。
蔵熟成させたものも時々出回わりますのでBY(※4)を気にしながら選ぶとより楽しいお酒です。基本的に辛口ながら甘みやふくよかさをすごく感じる醇酒タイプだと思っています。
湯煎でちろり(※5)で辛抱して温めましょう。私は40度あたりのイメージです。ふんわりと炊けたお米の豊かな香りに、香木やバナナの皮のニュアンスになぜかクローヴの様なスパイス香、口に含むとその驚くほどの包容力。濃いとか強いではなく懐深いような。熟成から生まれる酒質の中の酸味は心地よいキレになり、このお料理とうまくデートできると思います。

スープ料理ですが、私たち日本人にとっては冬本番の鍋料理ですよね。
益々日本酒が恋しくなってきました。
今晩は鶏つくね鍋、ですが水と昆布でシンプルに炊く"水炊き"に仕立てよう。
旨い純米酒がこのデートをナビゲートしてくれるように祈ります。
Bon courage!

※1・・・ルイユ/rouille(ブイヤベースや茹でた魚に添えられるプロヴァンス地方のソース。唐辛子とニンニクをすりつぶし、ブイヨンとオリーブ油で溶いたもの。アジミヌでは唐辛子の入らないアレンジパターン)

※2・・・セニエ法(ロゼワインで一番用いられる醸造法。赤ワインを造るのと同様に、除梗し、果粒を種がつぶれない程度に破砕し、果汁を皮や種と一緒にタンクの中で8時間から48時間浸漬し、果皮の色素を果汁につけ、ピンク色に色づいた果汁をタンクから抜きとり、引き続き発行させる方法。他のロゼワインの製法と比べてブドウの果汁が皮と接している時間が長くなるため、色合いが濃く、タンニンが多く含まれたロゼワインとなる)

※3・・・圧搾法(赤ワインを造るときに使う原料と白ワインを造るときに使う製法。黒ブドウをゆっくり圧搾していき、その際にわずかに抽出される色素でロゼワインの色が付く。セニエ法と比べて、ブドウの皮と接している時間が短いため色合いは淡いロゼ色となる)

※4・・・BY(brewery yearの略。醸造年度のこと。日本酒の場合は酒造年度(醸造年度)を指す。 一般的な年度は4月1日から翌年3月31日までを指すが、日本酒業界では、7月1日から翌年6月30日を年度としている)

※5・・・ちろり(燗酒を作るためのコップのような形をした酒器のこと。錫や銅などの金属やガラス製のものなどがある。日本酒を容器に入れて湯煎で好みの温度に温める。取っ手と注ぎ口があり、そのままお猪口などに注ぐことができる)

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▲さまざまな魅力が詰まったコルス。ナポレオンの生地としても有名な島

寄稿者:メートル・ド・セルヴィスの会 岩佐 和(いわさ わたる)
     学士会館精養軒 フランス料理 ラタン
     マネージャー ソムリエ
     メートル・ド・セルヴィスの会 幹事
     APGF 2019年 第18回メートル・ド・セルヴィス杯 準優勝


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