レシピの話

フランス地方料理を巡る旅

ヌーヴェル=アキテーヌ地方

プール・オ・ポ アンリ4世風 ~ ワイン編 ~

Vol au vent à la toulousaine

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▲プール・オ・ポ アンリ4世風(Poule au pot du Roi Henri Ⅳ)作り方はこちら

新年度がスタートしました。皆さまの所にも春は訪れていますか?
本年度もレシピの話をどうぞよろしくお願いいたします。
さて、先月フランス南西部ベアルン地方の名物で400年の歴史を持つ「プール・オ・ポ アンリ4世風」をご紹介しました。今月はワイン編をお届けします。執筆いただいたのはメートル・ド・セルヴィスの会の長谷川さんです。
ところで、「ドゥミ・ドゥイユ(demi-deuil)」という言葉をご存知でしょうか?半喪服(略式喪服、喪服の後半期など)の意味ですが、料理名に用いられると良い意味に変化します。長谷川さんならではのユニークな切り口のエッセイです。続きはぜひ本文で。

~ 第2章 ~
ワインの話
長谷川 純一(はせがわ じゅんいち)さん
(俺のフレンチ・グランメゾン 支配人兼シェフソムリエ)


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 コラム読者の皆様、いつもありがとうございます。俺のフレンチ グランメゾンの長谷川純一です。今年は東京も桜の開花が12年ぶりに半月ほど遅いということで、春と冬を繰り返すような気候が続いておりますが、新たなステップを踏み出す方々にとっては良いタイミングで「満開」を迎えることができそうですね。
 私のレストランにもアスパラガスや山菜、モリーユ(あみがさ茸)、ホタルイカや仔羊など春を告げる食材が続々と届いております。それに合わせてワインも春らしい酸を感じるソーヴィニヨン・ブランやリースリングのような白ワイン、ピノ・ノワールやマスカット・ベリーAのような華やかな香りの赤ワインがペアリングに登場しています。
 今回のコラムの料理テーマは『プール・オゥ・ポ・アンリ4世風』。まさにフランスのシンボルでもある「鶏」が主役のお料理です。全ての国民の家庭のお鍋に鶏肉が入ることを願ったアンリ4世。そんな素晴らしい王様の気持ちにお応えするマリアージュを考えたい!

その前に...

日本ではやはり1番人気のお肉は「牛肉」でしょうか?牛肉の鮮やかな「赤」色に繊細な脂身「白」色が美しく入り込み「紅白」の縁起の良い色合いが印象的です。一方でフランスではご存知の方も多いと思いますが、「ドゥミ・ドゥイユ」(半喪服)という言葉が縁起の良い色合いです。これはフランスのシンボルの鶏肉の「白」とトリュフの「黒」の2色を表現したものでフランスのクラシカルな料理として知られています。せっかくですので今回はお互いの国の縁起の良いカラー、日本では「赤と白」、フランスで「黒と白」というこのコントラストの効いた色の組み合わせをペアリングのテーマにしていきます。
さあ!どんなワインが登場するかもう皆さんお分かりですね?

ワインの世界では「赤」ブドウとは呼ばずに、「黒」ブドウと「白」ブドウを両方とも使って造られるワインといえば、そうです!

シャンパーニュ!!

...と言いたいところではありますが、今回は「全ての国民の家庭のお鍋に鶏肉が入る」というのがアンリ4世の想いです。世界最高のスパークリングであるシャンパーニュは誰もが飲めるような代物ではありませんから、今回私は、

「Crémant(クレマン)」

 を今回の料理に合せてご提案したいと思います。
クレマンはシャンパーニュと同じ製法で瓶の中で丁寧に炭酸ガスを造っていくシャンパーニュ方式(トラディショナル方式)で造られるフランスのシャンパーニュ「以外」の地域のスパークリングワインです。シャンパーニュは熟成規定も厳しく瓶内の熟成は15カ月以上が義務づけられていますが、このクレマンは9カ月以上というもう少し穏やかな規定で、もちろん製法は一緒ですからシャンパーニュにも負けない味わいで、コストパフォーマンスも抜群!様々な意味で家庭にも優しいワインです。フランスには様々な地方の魅力があります。

■クレマン・ド・リムーは、シャンパーニュより古い歴史
■クレマン・ド・ボルドーは、力強い味わい
■クレマン・ダルザスは、フランス国内で最も人気
■クレマン・ド・ロワールは、美しい酸味
■クレマン・ド・ジュラは、酵母の旨味
■クレマン・ド・ディーは、アロマティック
■クレマン・ド・サヴォワは、ミネラリー
■クレマン・ド・ブルゴーニュは、え!?シャンパーニュ??

こんな各地の魅力あふれる8つのクレマンがフランスでは認められています。
アンリ4世が願う全ての家庭で造られる鶏肉のポトフの味わいは、きっと各家庭の郷土が活きたそれぞれの家庭の味わいであるに違いありません。そんな地域や家庭の想いを尊重する各地方のクレマンに想いをのせて、家族みんなで一つの鍋を囲む幸せが末永く続きますように!
皆さまも素敵な春をお迎えください♪

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▲フランス8つのクレマンの特徴を把握すると料理との合わせ方も広がります
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▲プーレ・オ・ポのブイヨン
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▲生ハムや鶏レバーが入ったファルス
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▲しっとり仕上がった鶏肉。みなさんはどの地方のクレマンと合わせますか?
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▲Bon appetit!

寄稿者:メートル・ド・セルヴィスの会 長谷川 純一(はせがわ じゅんいち)
    俺のフレンチ・グランメゾン 支配人兼シェフソムリエ
    メートル・ド・セルヴィスの会 幹事
    第7回 JALUX WINE AWARD 準優勝
    第6回全日本最優秀ソムリエコンクール セミファイナリスト
    第16回メートル・ド・セルヴィス杯 全日本大会 優勝
    第6回 CGB世界サーヴィスコンクール パリ大会 準優勝
     チーズプロフェッショナル、ワインプラスカレッジ講師 他

【商品提供協力(皿)】NIKKO ニッコー株式会社

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