
レシピの話
フランス地方料理を巡る旅

暑い日が続きますね。夏といえば、やはり南仏プロヴァンス!ということで、暑い夏でもバジルとトマトとニンニクのハーモニーで美味しく食べられてしまう一品のご紹介です。キリッと冷やしたロゼワインとともにともにお楽しみください。
材料
<材料>(4人前)
- マグロ:100g×4切れ
- オリーブオイル:適量
- ニンニク(アッシェ ※1):15g
- タマネギ(アッシェ):170g
- ロゼワイン:100ml
- トマト(コンカッセ※2): 700g
- タイム:2枝
- ローズマリー:2枝
- エルブ・ド・プロヴァンス:適量
- 黒オリーブ(エマンセ※3):30g
- ケッパー:20g
- フィーヌ・セルブ:適量
- 塩・コショウ
- ニョッキ
- ジャガイモ:400g
- 薄力粉:150g
- 卵:1個
- オリーブオイル:15ml
- 塩・コショウ
- ピストゥ
- バジル:25g
- 松の実:10g
- アンチョビ:8g
- オリーブオイル:100ml
- ニンニク:10g
- パルメザンチーズ:8g
- 塩・コショウ
<フランス料理用語注釈>
※1・・・アシェ(hacher) 細かく刻む
※2・・・コンカッセ(concasser)粗く刻んだ
※3・・・エマンセ(émincer)薄くスライスする
※4・・・シュエ(suer)faire suer 細かく切った野菜を油脂の中で、弱火で火入れし、その水分の一部を出させて汗をかいたような状態にすること
※5・・・レデュイール(réduire)煮詰める

作り方
- マグロにアセゾネ(塩・コショウ)し、鍋でオリーブオイルを熱し、マグロを両面ソテーする。
- マグロを取り出し、オリーブオイルを足し、ニンニク・タマネギを加ええてスュエ※4し、香りを出す。
- ワイン・トマト・タイム・ローズマリー・エルブ・ド・プロヴァンスを加えて蓋をし、5分程煮る。
- 蓋を外し、塩・コショウして、強火にし、レデュイール※5していく。
- 煮詰まってきたら、黒オリーブ・ケッパーを加え、マグロを戻し、水分を調整しながらマグロに火を入れる。
- ニョッキの材料をすべてフードプロセッサーでさっくと合わせ、打ち粉をしながら棒状にのばしカットする。
- ピストゥの材料をすべてブレンダーでまわし、味を調える。
- 6のニョッキを茹で、7のピストゥで和え、小さい器に盛り、ガルニチュールとする。
シェフエピソード

「Provence/プロヴァンス」。何と優雅な響きでしょう。日本でも数十年前に雑誌や書籍、映画を中心に一大「プロヴァンス」ブームを巻き起こしたことがありました。今回のお料理はこの「プロヴァンス=アルプ=コート・ ダジュール地域圏」が舞台となります。暑い日本の夏にもふさわしいページになりますように・・・。
「南フランス」「南仏」「プロヴァンス」と、我々日本人にとって呼び方は様々ですが、イメージするのは「太陽の光」「青い空」「青い地中海」「裕福な人たちがヴァカンスで訪れるリゾート地」そして何と言っても「カラフルな南仏料理」と「世界中のセレブ達がこぞって集まる美食レストランの数々」ではないでしょうか。
私の世代の料理人だと「Le Moulin de Mougins/ル・ムーラン・ド・ムージャン」「L'Oasis/ロアジス」、「Le Chantecler/ル・シャントクレール(ロテル・ル・ネグレスコ)」、「Le Louis XV-Alain Ducasse/ル・ルイ・キャーンズ-アラン・デュカス (ロテル・ド・パリ)」「L'Oustau de Baumanière/ルストゥ・ドゥ・ボーマニエール」等のミシュラン星付きレストランが有名で、若い頃にそれらのレストランが載っている料理本を見る度に「何か豪華で煌びやかですげーなぁ!」と無知なりに感じていました。「ナイフ、フォークが金色だぜ!」とか。
特にRoger Vergéシェフ(ロジェ・ヴェルジェ/ル・ムーラン・ド・ムージャンオーナーシェフ)の数冊ある料理本の写真はそれはそれは美しく(蔵書している方もいると思いますが)何度見ても溜息が出るほど。とても重量感のある分厚い本ですがページをめくる度に心は「プロヴァンス」へ旅立っていきます。
さて前置きが長くなりましたが、南仏といえば「青い地中海」ということで、今回は魚料理の「Thon rouge à la Provençale avec gnocchis au pistou /マグロのプロヴァンス風 ピストゥ風味のニョッキ添え」をご紹介します。 調理はいたってシンプルでマグロを焼いてあっさり煮込むだけなので、材料の善し悪しがそのまま出ます。是非、新鮮な材料を揃えて作ってみてください。美味しいですよ。南仏の気分でテラスでこの料理を食べながらロゼワインが飲みたくなります。そして「Thon rouge à la Provençale」は南仏の一般家庭でもとてもポピュラーな料理で、缶詰めの製品が存在するほど。もちろん街のレストランでもより洗練されたプラ(メイン料理)として食べることもできます。
ガルニチュールとしてバジルが香るニョッキのピストゥ風味を別添えにしました。イタリアに近い地域なので、よくパスタやニョッキを食べる習慣があるようです。私が働いた内陸の地方ではパスタがメニューに載ることはなく(ラビオリ料理はありました。)、まかないでバターで和えて塩・コショウだけしたスパゲッティーを食べるくらいでした。どこかで書きましたがフランス人の同僚たちがスパゲッティーをクトー(ナイフ)とフルシェット(フォーク)でカットしながら器用に口に運んでいるところを初めて見た時はびっくりでした。「何で切るねん!」でも・・・気が付いたらいつしか自分も彼らと同じ食べ方をするようになっていました。不思議ですね。帰国してスー・シェフとして働いた最初のお店のまかないで、ある日、スパゲッティー・ペペロンチーノを普通に(当時は)切りながら食べていたら、調理スタッフ全員約20人が食べる手を止めて、お口をぽかーんと開けたまま私を凝視。「何が?」と思いましたが、ふと我にもどり「あっ!」とフルシェットでくるくる、懐かしい記憶です。
最後にせっかくなのでプロヴァンスでの思い出を少し。 日本に帰国するための飛行機代を稼ぐべくローヌのレストランで働いたことは前回「Caghuse/カギューズ 」のページで書きました。思いのほかギャラが良すぎて飛行機代とは別に多額の貯金までできてしまったので、急遽パリへ上がる前に最後の思い出作りとしてモナコ公国へ行って、当時も三ツ星の「Le Louis XV-Alain Ducasse/ル・ルイ・キャーンズ-アラン・デュカス 」で食事をするという贅沢な計画を立てました。もちろん一人ぽっちです・・・。
ローヌでのハードな約半年間の仕事を終えたあと、オーナーシェフのご厚意でレストランに併設されているホテルで映画のような優雅な二日間(昼間はトロピカルドリンクを飲みながらプールで過ごし、ディナーはローヌ川を見下ろすテラスでサービスのスタージュで来ている女の子とゆっくりとお食事、そのあとホテルのルームサービスでキャビアとブリニ・・・。)を過ごしてから、いよいよモナコへ向けて出発です。朝、ホテルとレストランの全スタッフに見送られながら思い出深いレストラン中庭の駐車場から「Tain-l'Hermitage/タン・レルミタージュ」の駅までプロンジェ(洗い場担当)J.Mくんのピックアップトラックで送ってもらいます。到着した駅のホームには私ひとり。鈍行の駅なのでした・・・。さあ!いよいよフランスで最初で最後のヴァカンスの始まりです。 長くなってしまったので、続きは次回に。(シェフM.T)




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