レシピの話

フランス地方料理を巡る旅

ペイ・ド・ラ・ロワール地方

若鶏のフリカッセ キノコとヌイユ添え<動画あり>

Fricassée de poulet aux champignons et aux nouilles

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 気づけばもう12月。今年も残すところあと僅かとなりました。皆さまにとってどんな一年だったでしょうか。
 12月になるとパリは朝8時でも外は真っ暗。夕方5時には日が暮れ、夜がとても長くなります。そんな中楽しみは、あちこちの通りや店先を美しく飾るイルミネーションと温かくて美味しい料理♪ 今月はそんな寒い冬に食べたくなる一品です。
 「フリカッセ」の起源は古く中世にさかのぼり、王侯貴族の宴にも登場するメニューでした。今では家庭にも浸透し、フランス人の愛するメニューの一つとなりました。
 後半はシェフエピソードです。そうそう、レストランで一人で食事に来る料理人は特に日本人が多いようで、来日したシェフが何人もそう話されていたのを思い出しました。この時の料理人の方々が、各地で活躍されているといいなぁと思います。

♪お知らせ♪
このレシピの作り方の動画が出来上がりました。下の写真をクリックしてご覧ください。
(東京ガス業務用テストキッチン厨BO!公式インスタグラムに変遷します)

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<前半>

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<後半>

材料

<材料>(4人前)
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  • ひな鶏:2羽
  • タマネギ(エマンセ※1):150g
  • サラダ油:適量
  • バター:適量

  • 白ワイン(ミュスカデ):300ml
  • レモン汁:適量
  • ブイヨン(下記分量):500ml
  • 生クリーム:400ml
  • バター:適量
  • パセリ(アッシェ※2):適量

  • ブイヨン用
  • 上記鶏ガラ
  • ニンジン(1/2切り):200g
  • タマネギ(1/2切り):300g
  • セロリ(1/2切り):100g
  • ブーケガルニ(ブイヨン用):1個
  • 水:材料がかぶるくらいの量

  • キノコのガルニチュール
  • キノコ類(5種類):500g
  • (本シメジ・椎茸・舞茸・マッシュルール・ヒラタケ)
  • バター:50g
  • ニンニク:2g
  • パセリ(アッシェ):適量

  • ヌイユ(手打ち麺)のガルニチュール
  • 薄力粉:150g
  • 強力粉:50g
  • 卵:2個
  • オリーブ油:15ml
  • 塩:2g

<フランス料理用語注釈>

※1・・・エマンセ(émincer)薄切りする
※2・・・アシェ(hacher) 細かく刻む
※3・・・レデュイール(réduire)煮詰める
※4・・・ムイエ(mouiller) 食材に液体を加えて材料がひたひたになる状態にする

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作り方

  • 鶏をさばき、鶏ガラを水洗いする。
  • ぶつ切りにした鶏ガラと香味野菜、水を鍋に入れ、簡易的なブイヨンをとる。
  • 鶏肉にアセゾネ(塩、コショウ)し、サラダ油をひいた鍋で、あまり色付けないようにソテーする。※煮込み時間短縮と色づきを抑えるために、低温のオーブンモードのスチコン(180℃)に10分程入れてもよい。(量に応じて時間は調節)
  • 3にタマネギのエマンセとバターを加え、再び炒める。
  • 4に白ワインをムイエ※4し、沸騰させ、ブイヨンと塩・コショウを加え、鶏肉に火を入れる。
  • 煮えた鶏肉をいったん引き上げ、煮汁を半量までレデュイール※3し、生クリームを加え、再びレデュイールする。
  • ソース状になったら、レモン汁を加え、味をみて、塩・コショウ・バターで味を整え、鶏肉を戻し、パセリを加え、保温する。
  • <キノコのガルニチュール>
  • キノコはほぐす、または適当な大きさに切り、フライパンでバターソテーする。途中ニンニクを加えて味を調え、塩・コショウで調味し、パセリを加える。
  • <ヌイユのガルニチュール>
  • 分量の材料を合わせ、練り込み、30分休ませてから、パスタマシーンでヌイユにする。
  • 塩を加えた湯で茹で、塩・コショウ・バターで調味し、パセリを加える。

シェフエピソード

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  以前、「Rougets à la Nantaise / ヒメジのナント風」と「Crémet d' Anjou/クレメ・ダンジュ」をご紹介したペイ・ド・ラ・ロワール。それに続く第三弾「Fricassée de poulet aux champignons et aux nouilles/若鶏のフリカッセ キノコとヌイユ添え」が今回の地方料理です。
 この「Fricassée/フリカッセ」はペイ・ド・ラ・ロワール地域のメーヌ地方が発祥の地と言われていて、主に鶏や山羊、兎に用いられる調理法として知られています。ロワール地方は豊かな土地と温暖な気候に恵まれているので昔から家禽類の飼育が盛んで、それに伴ってクリームやバター、フロマージュ(チーズ)等の乳製品も豊富に生産されているため、この料理が生まれたと思われます。

 また、ロワール地方は皆さんもご存知のようにお城が沢山あります。そこの城主である王侯貴族に仕える料理人達の技術力も相当高かったことでしょう。そんなこともあり、白いソースで仕上げるという貴族が好みそうな上品な料理となり、それが長い年月を経て地域に広まり、地元の人々の食生活に定着していったのではないでしょうか。
 手元にある「ラルース料理百科事典」によると現在フリカッセは、「白いソースによる家禽の調理法を指すのにもっぱら用いられている。かつてはラグー各種を指し、家禽ばかりか食用肉、魚、野菜を使って白いソースや茶色のソースで作られるラグーを全てを指した。」とあります。つまり白く仕上げるのが基本ということです。
 なので今回は鶏肉をあまり色付けないようにソテーし、なおかつガルニチュールのキノコも別に調理して添えています。が、シェフによってはしっかり鶏肉はリソレ(焼き色をつけて)して煮込み、でも白く仕上げるという方やキノコも一緒に煮て、多少白く仕上がらなくとも料理としての一体感を大切にしたいという方もいらっしゃいます。シェフというポジションに就く方は、このようなフランス料理の基本を知識として理解した上で、それを自分なりに応用し、仕事で実践しています。私の知る日本のフランス料理のシェフ達は夜な夜な、国内外の料理書を手に取り、エスコフィエを閲読しながらメニューを考えている方が殆どです。なので皆さん調理法についてはとても詳しいのです。

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料理人の勉強について

 丁度良いので、ここでキュイジニエ(料理人)の読書や料理の勉強について少し書きます。大体のキュイジニエは現場に入った10代後半、安い給料をやり繰りしながら、少ない休日に他のフランス料理のレストランへ勉強のために食事に行きます。私もそうでした。同期の仲間とだったり、先輩とだったり、彼女とだったり、その時々でメンバーは変わります。誰とも予定が会わなければ、一人でも行きます。今でもよくレストランでスーツを着た若者がポツンと一人で食事しているところを見かけます。十中八九、彼はキュイジニエです(たくましい!) 。日本国内に限らず、私がフランスで働いていた3年間の間でも一人で食事に来る日本人の若者が何人もいました。「こんなフランス田舎町まで・・・凄いなぁ。」と思いながら、シェフの命令で食事後の調理場見学の通訳をしたり、フランス修業の相談をされたりと少しくらいは彼らの力になれたかな。その後、帰国して私がシェフをしていたレストランに「フランスでお世話になった〇〇です。」とわざわざ何人か来てくれましたが、なかなか顔や名前を思い出せず、「あ!あの時の!」と笑顔で対応するのにその時は必死でした。心の中では、ただただ申し訳なく・・・。
 あっ!読書の話でしたね。戻ります。キュイジニエは一般の人が見るとビックリするほどの料理書を所有しているのがスタンダードです。ちょっとした図書館だねと、本の多さを見た人は言います。だいたい数百冊は皆さん持っているのではないでしょうか。私の尊敬する先輩は独身時代にすでに6畳の部屋(生活は4畳半で)を図書館にしていました。それも半分原書。若い頃にヨーロッパで8年間を過ごされた方なので、フランス、イギリス、ドイツ、スペイン、オランダ等各国の料理書がずらり。壮観でした。もちろん日本語の料理書も沢山!
 ある時、当時勤めていたレストランでドイツのミシュラン三ツ星シェフを招聘してフェアをやることになりました。当然、インターネットもない時代なので我々若手には事前情報がありません。そこで上記の先輩に相談してみると例の6畳部屋図書館から3冊のそのシェフの著書(原書)を持ってきてくださいました。ドイツ語は全く解らないので重要そうな部分を口頭で翻訳していただきメモを取り、フェアに備えたことを憶えています。先輩がドイツのシェフの料理書を持っているのも凄いし、翻訳出来てしまうことに本当にしびれちゃいました。当然、その後その3冊の料理書は数年を掛けてあらゆる手を尽くして入手し、今も私の本棚に並んでいます。(シェフM.T)


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