レシピの話

フランス地方料理を巡る旅

ブルターニュ地方

オマール海老のアルモリケーヌ風  丸ごとカリフラワーのココット焼き添え<動画あり>

Homard à l'armoricaine,chou-fleur entier rôti en cocotte

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   フランスから派遣され長年FFCCで講師を務めてくれていたアントワーヌシェフがこの料理をよく調理実演していました。今となってはレシピがアルモリケーヌだったか、アメリケーヌにだったか、生クリームが入っていたかなど記憶があいまいですが、夜遅くにアメリカから訪れた友人のためにあり合わせの材料で作ったことから生まれたレシピだという話や、活きたオマールを手際よくざっくざっくと半分に切り分け、丁寧に卵やコライユ(みそ)を取りだし、最後に加えて鮮やかな赤に変化するところ、砂袋などごく一部を除いて殻まで全て使い切るところ、そしてなんといってもその美味しさに感動したことは良く覚えています。南仏のレシピのようでありながら、パリ発祥説や元はオマール・ブルーで有名なブルターニュ地方(かつてアルモリカと呼ばれた沿岸地方)のレシピだとか、はたまたオマール海老のこの素晴らしいレシピ名にアメリカとつくのが納得がいかずフランスの地名を冠したアルモリケーヌにした・・・などなど諸説あります。本来は生のオマール海老を使用するのが絶対条件ですが、今回は既にボイルされたオマールで作っています。生でなくてもさすがオマール海老!貫禄の美味しさです。名前に諸説あるのも美味しいレシピだからこそなのでしょうね。

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このレシピの作り方の動画が出来上がりました。下の写真をクリックしてご覧ください。
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オマール.jpg
<前半>

オマール (1).jpg
<後半>

材料

<材料>(2人前)
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  • オマール海老(今回ボイル済を使用):2尾
  • フュメ用
  • サラダ油:少量
  • レッドオニオン(またはエシャロット):180g
  • ニンジン:180g
  • 長ネギ(またはボロネギ):100g
  • ブーケガルニ:1個
  • 水:1L

  • ソース用
  • バター:適量
  • ニンニク(アシェ※1):30g
  • レッドオニオン(またはエシャロット):50g
  • ニンジン:50g
  • 長ネギ(またはポロネギ):50g
  • トマト:300g
  • トマトペースト:30g
  • コニャック:30ml
  • 白ワイン:50ml
  • シードル:50ml
  • エストラゴン:少々
  • カイエンヌペッパー:少々
  • レモン汁:少々
  • バター:適量
  • パセリ:適量
  • 塩・コショウ
  • ガルニチュール1
  • ニンジン:80g
  • ジャガイモ:80g
  • ズッキーニ:80g
  • バター:適量
  • 塩・コショウ

  • ガルニチュール2
  • カリフラワー:1個
  • バター:適量
  • ハチミツ:30g
  • キャトル・エピス:少々
  • レッドオニオン:50g
  • 水:200ml
  • 塩・コショウ

作り方

  • オマール海老をデコルティケ※2する。
  • オマールの殻をミキサーにかけて砕く。
  • 鍋にサラダ油をしき、エマンセ※1した香味材料と2をシュエ ※3する。水をムイエ※4し20分間煮出してパッセ※5し、フュメ・ド・オマールとする。
  • 鍋にバターを溶かし、オマールの尾とはさみを軽くソテーし、一旦取り出す。
  • その鍋でニンニクアシェ、香味材料のエマンセ、コンカッセ※6したトマトをシュエし、オマールを戻し、アルコール類、ハーブ類、トマトペーストを加え、軽く煮て、オマールを取り出す。
  • 5のキュイッソン※73のフュメ・ド・オマールを加え、レデュイール※8する。適度な濃度になったらパッセし、取り置いていたオマールの卵を加え、バターモンテ※9して味を整え、オマールを鍋に戻し、温める。

  • カリフラワー
  • カリフラワーをよく洗い、水気をきって、花蕾全体にバターを塗る。上からハチミツをかけ、軽くアセゾネをする。
  • ココット鍋に入れ、200℃のオーブンで40~50分火入れする。途中、水とエマンセしたオニオンを加える。

  • 仕上げ
  • お皿にオマールを盛り付け、ソースをかけ、ブランシール※10した野菜のココット(面取りした野菜)をバターで温めて盛り付け、パセリを散らす。別皿でカリフラワーのローストを添える。
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▲(下左)卵、(下右)フュメ・ド・オマール

<フランス料理用語注釈>

※1・・・エマンセ(émincer)薄切りする
※2・・・デコルティケ(décortiquer)殻をむく
※3・・・シュエ(suer) faire suer シュエする、細かく切った野菜を油脂の中で弱火にかけ、その水分の一部を出させて汗をかいたような状態にする
※4・・・ムイエ(mouiller) 食材に液体を加えて材料がひたひたになる状態にする
※5・・・パッセ(passer)漉す、ふるいにかける
※6・・・コンカッセ(concasser)(石臼などで)粗く砕く、(ナイフなどで)粗く切る(刻む)
※7・・・キュイッソン(cuisson)(1)加熱調理 (2)煮汁
※8・・・レデュイール(réduire)煮詰める
※9・・・モンテ(monter)(1)(泡だて器で)かき立てる(2)バターモンテする。バターで仕上げる
※10・・・ブランシール(blanchir)ゆがく。ブランシールする(製菓)(卵などをかき立てて)白くする

IMG_9890.JPG▲丸ごとココット鍋に入れて火入れしたカリフラワー

シェフエピソード

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 2026年の「レシピの話」第一弾はブルターニュ地方がテーマです。使用する食材もおめでたい「海老」をチョイス。それも高級食材である「オマール海老」です。本来であれば「オマール・ブルー」と呼ばれるブルターニュ産オマール海老を使いたいところなのですが、予算と撮影時期の関係でボイル済のオマール海老を使用しました。なのでガルニチュールだけでもと存在感のあるブルターニュらしいカリフラワーを添えています。
 さて今回の料理名は「Homard à l'armoricaine」です。初めて聞く料理名だという方もいらっしゃるかと思いますが、「アルモリケーヌ」というのは、7世紀くらいまでのブルターニュの古称「アルモリカ(ケルト語で海の近くの意)」から来た表現と言われています。どちらかというと「Homard à l'americaine」(アメリカ風)の方が一般的に浸透しているのかもしれません。
 一説にはパリのレストラン「ピーターズ」の店主ピエール・フレス氏がアメリカ人の友人たちがお店を訪れた際に作った「Homard à l'armoricaine」が好評だったので、料理名を聞かれた時に彼らに敬意を表して「Homard à l'americaine」と答えてから世界的にその料理名が広まったのだとか。

私の個人的な方針としてはクレメ(生クリームを加えること)するかしないかで料理名の区別をしています。もちろんシェフによって認識は様々ですが、メニューを書く際にこういったお話があると客席にご挨拶に出た時などお客さまとの会話が弾むかもしれませんね・・・。
 私が働いたフランスのレストランは田舎のオーベルジュが大半だったのでどこも厨房がまあまあ広く、スペースが十分あるのでオマール海老などの海産物を水槽のなかで活かしながらオーダーを待つというスタイルが多くありました。オマールだけでも何十尾も入れるのでちょっとした水族館みたいな雰囲気です。広い厨房のなかに水槽がある場合の他にお客さまに見えるようにレセプションなどの横に設置している場合もありました。
 どこかの章でも書きましたが、とあるブルゴーニュ地方のレストランではオマール料理のオーダーが入るとポアソニエ(魚担当)所属のアプランティ(見習い)やスタジエ(研修生)が網をもってレセプション横にある水槽まで猛ダッシュします。「Allez vite! vite! vite!(行けー。早く早く早く!)」とポアソニエ達に言われながら必死な顔つきで水槽に向かいます。何か月もいる子はコツを掴んでいるのでサクッとオマールを網に入れて厨房に戻ってくるのに対し、まだ入ったばかりの子は、手間取っているのかなかなか戻ってこれません。そんなこんなで対面で見ててもポワソニエはいつもバタバタしていました。

オマール海老の思い出

 

 実はオマール海老の料理で私が一番印象に残っているのは、フランスではなく日本で一番最初に働いたレストランの料理です。当時はまだ一年目でしたので洗い場が主戦場で料理の仕事は賄いのお手伝いと野菜の皮むきくらい。体力的にもきつくて毎日が恐怖と不安が入り混じった不安定な精神状態のころでした。ただ洗い場ならではの特典として先輩方が使った鍋やフライパンにほんの少し残ったソースやガルニを隠れて味見できるという行為が許されていました。正確に言うと許されてはいませんが、先輩方が見て見ぬふりをしてくださった感じ。しかし、それが機嫌の悪い最中のシェフやスーシェフに見つかろうものなら最後、容赦なく鉄拳制裁です。なので命がけの行動でした。
 その決死の味見の経験のなかで「オマール海老のフリカッセ」という料理がありました。高価なアラカルトの料理なので毎日出るものではないのですが、オーダーが入ったらその調理過程を見るべく、ソーシエにパイ皿やキュイエール(スプーン)を補充する頻度を上げて、ストーブ(オーブン)周りになるべく近寄っていました。
 その料理は贅沢にオマール海老1尾が1人前で、大きなお皿に盛られて濃厚なソース・アメリケーヌと野菜のココットが添えられた立体的な盛り付けの逸品でした。見てるだけでよだれが出てくるほどです。「鍋洗え!」の命令を合図にその鍋を洗い場に持っていき、一瞬で360度周囲を確認して指で鍋底にほんの少し残ったソースをすくって舐める早業。何回、これをしたかは憶えてませんが「すごい!こんな美味しいソースがあるんだ。」とその衝撃は今でも私の脳裏に焼き付ています。なので、私のソース・アメリケーヌはこの時の味の記憶が理想のイメージとなっています。(シェフM.T)


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