レシピの話

フランス地方料理を巡る旅

お菓子

ガレット デ ロワ

Galette des Rois

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<焼成の途中で、ガレット上に天板を載せて平らになるように焼くとより一層ガレットらしくなって良し!シェフによるとこれは少し膨らみすぎとのこと。>

 もうすぐクリスマスですね。そして新しい年が巡ってこようとしています。今回の「レシピの話」は、「 Galette des rois(ガレット・デ・ロワ)」のご紹介です。フランスではクリスマス休暇が終わり、年が明け、仕事や学校が始まる日常生活の訪れとともに「ガレット デ ロワ」の季節が始まります。家族だけでなく、職場やクラス、友人達など人が集まると「ガレット デ ロワ」を食べてお祝いをします。「今年はこれで4つ目だよ・・・もう食べられない」「また太っちゃう」との嬉しい?悲鳴や「私はまだ食べてないわ」やら「あの店のガレットはやっぱり美味い」などといった会話が繰り広げられます。
フランスの伝統的な焼き菓子のガレット・デ・ロワは、直訳すると「王のお菓子」。
もともとは、1月6日の公現節(エピファニー:Epiphanie / キリストの誕生日は12月25日ですが、東方の3博士によってキリストの生誕を公にした日で、カトリックでは重要な日とされています。)をお祝いして食べるお菓子でしたが今では、宗教色は薄れ、新年を祝う菓子としてフランスの人々に親しまれています。中に入っているフェーブの可愛さや種類の多さも相まって、日本でもご存じの方が多いのではないでしょうか。
IMG_7656☆.jpg  今回ご紹介するのは、フランス料理文化センター監訳のフランス菓子大全(東京書籍)P480掲載の「GALETTE À LA FRANGIPANE」(ガレット・ア・ラ・フランジパンーヌ)をもとにしています。実際にシェフに作ってもらったものを食べたのですが、C'est très bon!(とっても美味しい)です!集い分かち合うことが難しい時節ですが、この一年の幸せを願って、ぜひお試しください。

材料

<材料> 直径18cm
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  • 折り込みパイ生地(パイシートでも可)
  • 薄力粉: 200g
  • 塩: 4g
  • 砂糖: 10g
  • 溶かしバター: 40g
  • 冷水:100ml
  • 折込用シートバター:140g
  • クレーム・フランジパーヌ(フィリング)
  • バター(ポマード状):50g
  • グラニュー糖 : 50g
  • 全卵 : 40g
  • 生クリーム(35%): 10g
  • アーモンドプードル : 50g
  • バニラエッセンス : 適量
  • ラム酒 : 5ml
  • クレーム・パティシエール : 25g
  • ドリュール(塗り溶き卵)
  • 全卵 : 50g
  • シロップ
  • 水 : 50ml
  • グラニュー糖 : 50g
  • ラム酒 : 10ml
  • クレーム・パティシエール
    (カスタードクリーム)
  • 牛乳 : 500ml
  • グラニュー糖 : 100g
  • バニラビーンズ : 1本
  • 全卵 : 100g
  • コーンスターチ : 25g
  • 薄力粉 : 25g
  • バター : 50g

作り方

パート・フイユテ

  • 5回折りの折り込み生地を準備する。生地を2つに分け(それぞれ250g)、正方形に成形する。
  • 1の生地2枚を、それぞれ角を真ん中に集め、作業台の上でひっくり返し、ボール状に丸める。
  • 2を伸ばして、円盤状の生地を2枚作る。ラップをかけて24時間、冷蔵庫で休ませる。

クレーム・パティシエール

  • 鍋に牛乳、バニラを入れ、温め香りを出す。
  • ボールに全卵、グラニュー糖を入れ、よく混ぜる。コーンスターチ、薄力粉を加え混ぜる。
  • 1を少しずづ加え、のばし、別鍋に漉し入れ、混ぜながら火を入れ、クリーム状になるまで火入れする。
  • 火から下ろし、バターを加え混ぜる。冷ます。

クレーム・フランジパーヌ

  • ボールにバター、グラニュー糖を入れ、よく混ぜる。
  • アーモンドプードル、バニラエッセンス、ラム酒を加え混ぜ、最後にクレーム・パティシエールを25g加え、混ぜる。

組み立て・焼成

  • バート・フイユテ生地2枚でクレーム・パティシエールをはさむ(この時フェーブを忍ばせる)。ドリュールを塗り冷蔵庫で休ませる。
  • もう一度ドリュールを塗り、模様をナイフで入れ、スチコンで加熱する。ホットモード・100%・180℃・40分・風量3(※オーブンの場合は180℃に予熱しておいたオーブンに入れ、180℃で40~50分焼く)。
    焼成の途中で生地の上に天板を載せて焼くと、ガレットの上面が平らになります!
  • 焼き上がったら、シロップを数回塗る。室温で冷ます。
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ガレット デ ロワの説明 & シェフエピソード

 ガレット デ ロワは1月6日の公現節をお祝いして食べるお菓子です。年明けの街のブーランジュリー(パン屋)やパティスリー(お菓子屋)には金色の紙製の王冠をのせた大小様々な大きさのガレット・デ・ロワがずらりと綺麗に並ぶそうです。残念ながら私、年明けは、いつもパティスリーもブーランジェリーもカフェもない田舎のレストランで、がっつり働いていたので、その光景を一回も見たことがありません。
 そのガレット・デ・ロワですが、「おみくじ的要素」もあり、中に隠し埋め込まれたフェーブ(昔は本物の空豆、今は陶製)が入った部分を食べた人が王冠をかぶり、その日一日「王・女王」として皆から祝福され、一年の幸福が約束されます。
 

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我々日本人が知るポピュラーな形は、主に北部のもので、ロワール川以南ではブリオッシュ生地で作る「ガトー・デ・ロワ」又は「ブリオッシュ・デ・ロワ」が好まれ、プロヴァンスやラングドックのものは、レモンピールを加えて、「ロワイヨーム」と呼ばれています。いずれも王冠の形をしています。またボルドーではコニャックで香りをつけて、「トルティヨン」と呼ばれています。どれもフェーブを入れる習慣は同じだそうです。今回は、ポピュラーなものを作ってみました。が、実は、昔から料理書やファッション雑誌(フランス特集)の写真を見て、気になっていたことが・・・。
 というのもフランスで最初に働いたレストランが発祥の地から近いこともあり、デセールのスペシャリテに「Pithivier(ピティヴィエ)」がありました。こちらも伝統的な焼き菓子です。焼き立てのピティヴィエの横に温めたグリオット(さくらんぼ)のブランデー漬けを添え、別添えの冷たいグラス・ア・ラ・バニーユ(バニラアイス)と共に召し上がっていただくもので、ずっしりとしていますが、熱々ひんやりでなかなか美味しい人気のデセールでした。
 今回のガレット・デ・ロワとこのピティヴィエ、構成がとても似ているので、どう違うのか、ずっと気になっていました。そこでそのレストランに長年勤めているおじいちゃんシェフ・パティシエ(製菓長)に質問したところ、「違うものだよ。」と。
 まず見た目。基本、ガレット・デ・ロワは「花とか様々な模様」を、ピティヴィエは「シャルル9世が乗った馬車(逸話あり)の車輪模様」を上面に描く。
 次に厚さ。ガレット・デ・ロワは「ガレットだから薄いし、貧しい人でも買えるように薄い」。一方、ピティヴィエは「厚い」。
 中のクリーム。ガレット・デ・ロワは、「クレーム・フランジパーヌ(アーモンドクリームとカスタードクリームの混合)」か「クレーム・ダマンド(アーモンドクリーム)」、ピティヴィエは、「クレーム・ダマンドのみ」。そして「フェーブ」の有無も。ピティヴィエにフェーブは入らない。情熱的に私が理解できるフランス語で説明してくれました。問題解決。納得しました。彼曰く、フランス人でもこの違いを理解していない人がいるとのことでした。 
お菓子から少し離れますが、年末年始の忘れられないエピソードといえば、フランスに渡って最初のノエル(クリスマス)。クリスマスのアルザス.jpeg 私が働いていた先程のレストランでは、24日と25日の2日間だけ日本のお店のようなノエル特別コースを用意していました。しかし、ほとんどのお客様は、通常のアラカルトからの注文。さすが自己主張の強いフランス人らしいなと思いました。でも「折角~。でっかいDinde(ダンド:七面鳥)を用意してたのに・・・。」。このノエルから大晦日までは、目の回るような忙しさで、連日、昼も夜も満席につぐ満席です。夏のようにテラス席はないので、席数的には少ないはずなのに(それでも120席以上)、何故だか忙しい。毎日へとへとです。
 12月25日の夜のサービスをやっと終え、調理場全員で掃除をしている最中、滅多に調理場に姿を見せないレセプションのお姉さま方5人がシャンパーニュを抱えて調理場へ。「Joyeux Noël !(ジョワイユー・ノエル:英語のメリークリスマス)」と言いながら、次々に私にがっつり抱きつき「ビズの嵐」ハーレム状態。(ビズ:bisou=挨拶の頬っぺたにするキス。お互いの頬っぺたをくっつけ、口でチュッと音をたてる)あっけにとられ、立ち尽くす私・・・。銀器に顔を映すと、ほっぺもおでこも顔中、口紅だらけ。グラス片手に「ん~~ん。フランス・・・。いいなあ~。」生まれて初めての体験でした。周りに目をやると、他のキュジニエ(料理人)たちは、スマートにビズをしています。まるで映画を見ているかのようです。一週間後の大晦日の夜も再び「嵐」が吹き荒れましたが、二度目なので、心の準備は既に出来ていて、私も映画のようにスマートにできたかなと・・・。
 ほろ酔いで仕事は終わりましたが、これから着替えて、スゴン(副料理長)のお家に集合して、「聖夜のキュイジニエたちの晩餐」です。・・・続きは、またの機会に、どこかで・・・。(シェフM.T.)

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