レシピの話

フランス地方料理を巡る旅

オー=ド=フランス地方

カギューズ

Caghuse

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材料

<材料>(8人前)
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  • 豚すね肉:500g
  • 豚もも肉:1㎏
  • マスタード:適量
  • ニンニク(アッシェ ※1):1片
  • ハチミツ:適量
  • タマネギ(エマンセ ※2): 800g
  • 白ワインビネガー:50ml
  • シードル:400ml
  • ブイヨン・ド・ヴォライユ:500ml
  • タイム:適量
  • ローリエ:1枚
  •   
  • ガルニチュール(付け合わせ)
  • ジャガイモ(蒸す):400g
  • インゲン(塩ゆで):150g
  • レッドオニオン(エマンセ):100g

  • オリーブオイル:適量
  • バター:適量
  • パセリ(アシェ):適量
  • 塩・コショウ

<フランス料理用語注釈>

※1・・・アシェ(hacher) 細かく刻む
※2・・・エマンセ(émincer)薄くスライスする
※3・・・ナペ(napper) 塗る
※4・・・ブーレー(beurrer)バターを塗る、バターを加える
※5・・・キュイッソン(cuisson)煮汁

作り方

  • 豚肉を掃除し、アセゾネしてマスタード・ハチミツ・ニンニクを合わせたものをナッペ※3し、しばらくおく。
  • ココット鍋の内側をブーレ※4し、豚肉、タマネギ、タイム、ローリエを重ね入れる。
  • 白ワインビネガー(酸味が気になるようなら沸騰させる)・シードル・ブイヨンを入れ、蓋をする。
  • スチコンで加熱する。 コンビモード・100%・190℃・約1時間半 → オーブンの場合は200℃・2時間 ※加熱調理途中、水分が煮詰まりすぎるようなら水を足す。(タマネギは季節や品種によって水分量で異なるため)
  • 豚肉が柔らかく煮上がったら取り出して、食べやすい大きさにカットする。
  • キュイッソン ※5の味をみて、煮詰めるか判断し、塩・コショウで調味し、ソースを仕上げる。
  • ガルニチュール(付け合わせ)の野菜はそれぞれ下処理をして、少量のバターとオリーブオイルで軽くソテー、調味する。
  • お皿にガルニチュールの野菜・豚肉を盛り、ソースをかけ、パセリをふる。
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シェフエピソード

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 今回の地方は「Hauts de France / オー=ド=フランス」。読んで字のごとくフランスの上(北)に位置している地域です。詳しい説明は以前「Ficelle picarde/ピカルディ風クレープグラタン」や「Macaron d'Amiens / マカロン ダミアン」の頁でご紹介しましたので、今回は省略させていただきます。どうぞこの機会に 是非その2品の頁を読み返してみてください。

それでは「Caghuse/カギューズ 」に参りましょう。ピカルディのトラディショナルな料理でボリュームも栄養もたっぷり。まさに体を使う農夫や労働者に喜ばれたであろう郷土料理です。調理工程については超シンプル。こんなに簡単なのに実に美味しい料理で、もしかしたら我々日本人が好む味なのかなと思います。
「肉じゃが的な・・・。懐かしい味みたいな・・・。」
調理としては材料をココットに入れ、オーブンの中で火を入れるだけ。フランス料理の原点ですね。こういうのは心が落ち着きます。色々バージョンがあるのですが今回の調理方法(マスタードをナッペしたり)とは違い、豚肉に塩・コショウだけして表面をリソレ(表面を焼き固める)して、玉葱もシュエ(加熱して発汗させる)して煮込んでいくという方法もあるようです。どちらかというとこちらの方がメジャーかもしれません。加える液体もぶどう栽培の北限を超えている地域なのでシードルだったりビールだったりと様々です。玉葱とシードルの心地よい甘みと煮詰まることによって生まれる「コク」がこの料理のセールスポイント。主材料も少ないので一度お試しあれ!
 ここで今回も使った調理器具「ココット」についてのお話を。以前「Pigeon aux raisins à la façon du vigneron/鳩の葡萄添え ヴィニョロン風:ぶどう栽培者風)」の頁でちらっと書きましたが今一度。「ココット」は現在の日本では家庭の台所でもプロのキッチンでも普通に使われていますよね。大きさもカラーも様々でおしゃれで実用的なキッチンアイテムとしての地位を既に確立しています。私も自宅で赤のル・クルーゼを長年愛用していますが、丈夫で長持ち、一生ものです。ひと昔前、私がフランス料理の修業を始めた頃、日本で勤めていた数軒のお店のキッチンでは見たことも使ったこともありませんでした。そういう鍋の存在すら知らなかった程です。
 当時(今もですが)、私にとってフランス料理といえば「銅鍋」がシンボルでしたので、ピカピカにそれを磨 くことが一年生時の日課でしたし、遠い遠い憧れの調理道具でした。「はたして自分が銅鍋を使ってフランス料理を作る日が本当に来るのかなあ?」と思いながらも汗だくで銅鍋を磨く毎日でした・・・。

ココット鍋の思い出

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 フランスへ行く前に眺めていたフランス料理の原書にはそこかしこに「ココット」を使った調理写真があり、大いに興味はありましたが、結局フランスへ行くまでの日本では一度も使うことがありませんでした。しかしフランスの調理場で働き始めても、いっこうに「ココット」の仕事ができないのです。というか調理場にないのです。たまたま私が入ったレストランがココット調理をしていなかっただけかもしれませんが、3件目でやっといつぞや書いた「マダムから教わるフランス家庭料理?」の時に初めて「ココット」を使って調理をしました。最初は重さに戸惑いましたが、じきに慣れてその使い勝手の良さに嬉しくなったのを覚えています。
 その後しばらくの間「ココット」を使った仕事に巡り合わずにいたのですが、最後の最後に帰国するための飛行機代を稼ぐために半年だけ入ったレストランで思う存分「ココット」を使うことになりました。以前も書きましたが、そのレストランの調理場の鍋はぼぼすべてが「ココット」で、尚且つすべてが同じ大きさで楕円形。カラーは色々なのですがどちらかというと暗い系の色ばかりで深緑や緑が中心。おしゃれな印象の赤や黄色はありませんでした。そこのスペシャリテが前菜が「Terrine de foie gras aux haricots verts/ フォアグラのテリーヌいんげん添え」、魚料理が「Lotte à la crème au safran/鮟鱇のクリーム煮 サフラン風味」、肉料理が「Cuisse de lapin farcie/兎もも肉の詰め物」で超クラシック。尚且つ調理はアラミニッツが基本。
  実にオーダーの約半分がこれらの料理だったので、たぶんオーナーシェフがそれらの料理に注文が集中するようにお客様を誘導していたのかな?半年間シェフが料理をする姿を見たことがなかったので接客(おもてなし)に集中していたのでしょう。調理場が1Fで客席が2F、ローヌ川を見渡すテラスも2F、そこを昼も夜も行き来しながらレストランを回すシェフのパワーは物凄いものでした。当時すでにおじいちゃんでしたが仕事に厳しくも心優しい方でした。ギャラも毎月どんどん上げてくれたので大変助かりました。それで帰国前にニースにも行けましたし・・・。私が仕上げたソースを毎日キュイエールで味見して、頷きながらウインクしてくれた姿が今も忘れられません。
 あっ!「ココット」ですが野菜をブランシール(茹でる)するのも「ココット」で、魚や肉をキュイするのも「ココット」で、もちろんソースを仕上げるのも「ココット」です。仕込みからサービス中までプラックの上は常に「ココット」だらけ。おかげで腕が太くなりました。(シェフM.T)

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